2005年08月12日

石井輝男「恐怖奇形人間」

石井輝男「恐怖奇形人間」。内容の都合上、残念ながら現在までビデオ化されていないが、とんでもない映画である。なにがとんでもないかってとにかくエンディング。言葉では言い表せぬほどの衝撃。石井輝男はこのエンディングを撮るためだけにこの映画を作ったのは間違いない。もしどこかで観る機会があれば、ぜひ自分自身の目で体験していただきたい。20世紀映画史に燦然と輝く革命。今こんな映画を撮れたら確実に天下をとれるだろう。

この映画のベースは江戸川乱歩「パノラマ島奇譚」。前半はしっかりとしたドラマが描かれている。いくつものありえない偶然が積み重なって加速度的に物語が展開していくのが石井輝男脚本の特徴。今作も例外でなく、ものすごい偶然が主人公をピンポイントに襲うことで話が進む。

白眉は後半だ。江戸川乱歩シリーズに欠かせない名探偵が登場するあたりから、映画に不穏な空気が流れ始めていく。観る者がいままで感情移入してきた主人公の男がなりをひそめ、名探偵がどんどんでしゃばりだす。妄想としか思えない推理が100%の精度で的中。ひるむ悪役。突如あらわれた怪しい探偵の饒舌ぶりに苦笑いする観客をほったらかしたまま、なにかに追われているかのように話が急転。そして誰に感情移入することもできなくなり、気持ちが宙に浮いた刹那、突如襲いかかるエンディング。これまでに交錯した様々な思いが、打ちあがる花火とともに木っ端微塵に破壊され、究極レヴェルのカタルシスが我々を包み込むのだ。

こんな映画を産み落としてくれた石井輝男に心から感謝したい。「恐怖奇形人間」は間違いなく、20世紀が誇るべき遺産である。現在、脚本だけは売られているのだが、ぜひともDVD化してほしい。いろんな問題はあるのだろうが、なにしろ「面白い」のだから。輝男マニアはみんな「おかーさーん!」と叫びたいのだ!


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posted by ワイ氏 at 03:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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