2005年08月16日

「ヒトラー最期の12日間」

「ヒトラー最期の12日間」を観る。ソ連軍がベルリンに侵攻しはじめてから、ヒトラーが自殺し、ドイツが無条件降伏するまでを、二時間半にわたって濃密に描ききった作品である。

映画の中心的な舞台は、そこかしこに死体が転がるベルリン市街ではなく、ヒトラーが隠れていた地下施設。閉塞的な空間に身を置き、勝ち目のない現状から目を背け、半ば錯乱しながら、妄想でしかない自らの戦略をまくしたてるヒトラー。その姿にもはやかつての勢いはない。指揮系統は麻痺し、ベルリンの腐臭はますます広がっていく。ベルリン制圧まで、もって20時間。参謀のささやく声に、もう終わりだと悟ったヒトラーは、愛人エヴァ・ブラウンとともに自殺する。

ヒトラーの秘書ユンゲを中心に進行する映画ゆえ、ユダヤ人虐殺についてはまったく触れられない。ので、ヒムラーやゲーリングなど、ユダヤ人に悪魔のような仕打ちをした側近達が、困った独裁者を抱える普通の人間として描かれていたのは新鮮。人間として描いたことで話題となったヒトラーの性格は、手塚治虫「アドルフに告ぐ」におけるそれに近かった気がする。

まあなにより、ヒトラーを演じた名優ブルーノ・ガンツが素晴らしかった。ダウンタウン松本人志が、さんざん憎んだ父親の弱りゆく姿を見て、「5秒で殺せる」と感じたような、そんな切ない立ち姿を見事スクリーンに具現化させたのである。

地下施設内部の視点から、骨太に史実を切り取った作品。見応えはある。良くも悪くもNHKのドキュメンタリーという感じであった。
posted by ワイ氏 at 03:39| Comment(0) | TrackBack(1) | 洋画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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ヒトラー・最期の12日間 独裁者だって大変なのよ……。。
Excerpt: ●ヒトラー最期の12日間を渋谷シネマライズにて鑑賞。 1942年、トラウドゥル・
Weblog: Blog・キネマ文化論
Tracked: 2005-08-17 11:52
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