2006年09月05日

三池崇史「妖怪大戦争」

尊敬する二大巨匠「水木しげる」と「三池崇史」がコラボしたってことですげえ期待して観たんだけど、あまりにアホすぎてズッコケた。「アンドロメディア」系のファミリー三池作品だね。

敵の怪物がターミネーターに出てきそうな凶悪なCG造形だったにもかかわらず、子ども向けってことで流血なしの平和な仕上がりに。「殺し屋1」ばりにエログロ全開な妖怪バトルも観たかったなあ。「大戦争」ってタイトルだけど、実際に戦ってたのは神木くんと河童の阿部サダヲのみで、あとの妖怪たちはみんなお祭り騒ぎしてただけ(笑)。まあこの温度差は逆におもしろかったけど、「鬼太郎」みたくもうちょい戦ってくれても。。。

大好きな妖怪「ぬりかべ」が出てきて、しかも近藤正臣に「おまえみたいな壁でも役に立つ時が来るかもしれん」みたいなこと言われてたから、「おっ!ぬりかべ活躍する伏線か?」って思ってたのに、全然出てこねえよ!ただの壁だったよ!竹中直人の「あぶらすまし」は完璧にハマってた。栗山千明はこのままキワモノ路線を突っ走ってほしいなあ。

ラストシーンには水木先生も「大箱」役で出演してて、「戦争はいけません。腹が減るだけ」っていうお言葉を残し消えていかれたのには若干テンションが上がったものの、いかんせんターゲットが子ども向けなもんで、全体として少しもの足りなかったかな。

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2006年01月03日

黒澤明「蜘蛛巣城」

黒澤明「蜘蛛巣城」を観る。これまためちゃくちゃ面白い!全編に禍々しいエネルギーが満ちあふれる傑作だった。

まるで蜘蛛の巣のような、八方に広がる迷いの森に囲まれた蜘蛛巣城。ここの家臣である三船敏郎と千秋実は、城への帰路、その森に迷い込む。そこで物の怪のバアさんに出会い、「おまえは出世する」的な怪しい予言を聞く。

予言はずばり的中し、三船敏郎は出世する。しかしそこから彼の人生が狂い出す。冷酷な奥方のそそのかしも手伝って、徐々に欲望に取り憑かれていく三船は、自らの欲望を叶えるため、殿様や千秋実を次々に暗殺。屍の山を築く修羅の道を歩むのだったが、精神的にどんどん追いつめられ‥‥みたいな話。

とにかく馬や兵の数が多い!蜘蛛巣城のセットもすごい!すんごく予算かかったんだろうなーという壮大な舞台にまず圧倒される。極めつけは三船敏郎のド迫力の演技ね。ラストシーンなんてすんげえことになってる。奥方役の山田五十鈴もやべえ。狂ってる。森のババアも怖すぎる。とにかくヤバいわこの映画。「七人の侍」レベルのマストチェック作品です!

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2005年12月29日

崔洋一「刑務所の中」

崔洋一「刑務所の中」を観る。

花輪和一氏の原作はだいぶ前に読んでたんだけど、吾妻ひでお「失踪日記」みたいな、自己の悲惨な状況を客観的にとらえて笑いに昇華させる、秀逸なドキュメンタリー漫画なんである。その空気感を踏襲しつつ、役者さんの個性もにじみ出るっていう煮物のような作品。

この映画では食事のシーンがすごく重要なんだけど、どの料理もいちいちおいしそう!規則正しい生活に、メシ、風呂付き。ムショ暮らしもまんざらでもないのかと思ってしまった。画にしても、ワンカットワンカット非常に丁寧に撮られている感じ。大ファンである田口トモロヲの演技も絶品であった。いやあ、堪能いたしました。



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勝新太郎「座頭市物語」

勝新太郎主演「座頭市物語」を観る。

ストーリーはよくあるヤクザもの。対立する組の一方に勝新が、もう一方に天知茂(明智小五郎とかで有名)がいて、最後に二人で真剣勝負して、勝新が勝つって話。北野武「座頭市」もそうだった。

とにかく、殺陣がすげえかっこいい。回数はそんなにないのだけど、ひとつひとつのインパクトがすごい。
座頭市が夜道で二人の男に襲われるシーンがあるんだけど、闇を照らす提灯の灯りをふっと吹き消して
「これであんたらとあたしは五分と五分だ。覚悟してかかってくんな」
みたいなこと言って、すげえ速さでたたっ斬るわけ。しびれます。

でも、最後の手討ちのシーンはイマイチ。敵の親分がせっかく鉄砲持ってたのに、天知茂に「卑怯だから持っていくな」って諭されて、結局使わずじまいで殺されたのはいただけなかった。そんなん従うなよ、ヤクザなんだから。

勝新太郎はすげえ迫力。なにやら鬼気迫るオーラすら感じた。

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2005年10月22日

記録映像

ナンバーガールの歴史を、多くの記録映像とともに振り返ることのできる作品。特に三、四枚目の、TV出演映像はすごく面白い。というか掘り下げ方が、深い。ナンバーガール解散の原因に、ベースの中尾憲太郎25歳の脱退があるのだけど、インタビューなどで、中尾がポツリポツリと言葉を紡いでいく中に、彼とナンバーガールとの温度差を感じることができたのは貴重だった。レコーディング風景、居酒屋での談笑風景、ライブ前の控え室風景なども収録されており、ファン垂涎の代物。もちろんライブ映像も圧巻だ。解散から三年が経つけれど、いまだに心に響くナンバーガールのロックスピリッツ。ひとりでしんみり鑑賞したい「ドキュメンタリー映画」である。
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2005年09月18日

矢口史靖の女の子映画

矢口史靖。「ウォーターボーイズ」、「スイングガールズ」などのヒットにより、これからも青春映画のオファーが絶えないことと思う。しかし、矢口史靖の真骨頂は、「ひみつの花園」をはじめとする、一連の「女の子」映画にこそある。

「ひみつの花園」は、西田尚美主演の傑作突き抜けコメディー。お金を数えることが好きだった主人公は、銀行員として働いている。ある日、その銀行に強盗が入り、自分が人質として連れ去られてしまう。しかし、その車が事故を起こし、5億円入りのスーツケースは水の底に沈んでしまう。主人公は川に転落するも、なんとか生きのび、沈んだ5億円をどうにかして手に入れようと動き出す、という話。

展開の早さとマンガっぽい馬鹿馬鹿しさに、思わず笑ってしまう。あとは西田尚美というキャスティングが秀逸。どこか間が抜けているんだけど、お金という目標に貪欲にがっついてゆく女の子を、魅力たっぷりに好演している。鈴木卓爾と共同監督した近作、「パルコ・フィクション」でも同様。真野きりなや唯野未歩子を、そういう「女の子」としてキャスティングしており、彼女達が、どこかおかしな世界観の中で振り回されてゆくさまをナンセンスに描いている。

「んなアホな」って思うんだけどつい笑う。さらに、主人公の女の子のホノボノな魅力も手伝って、ホノボノ引き込まれていく。これが「低予算系矢口映画」の特徴。無駄なシーンをポンポンカットして、ドタバタと話を展開させてゆく手法も、マンガ世代には小気味いい。週末のおやつタイムのお供にオススメです。



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2005年08月14日

生瀬勝久と映画

生瀬勝久。いまもっとも気になる役者のひとりである。大きな目をさらに見開いて、これでもかと笑いをとってくる三枚目ぶりも見事だが、シリアスな役どころもなんなく演じてみせるところに、役者としてのただならぬ力量を感じる。

テレビドラマ、演劇においては、いまや顔を見ない日はないほどの人気ぶりだが、こと映画においては目立った活躍をみせていないように感じる。堤幸彦「劇場版トリック」は例外として、わたしの記憶にあるのは「トキワ荘の青春」における端役ぐらいしかない。あれだけの多忙ぶりからして、拘束時間の長い映画の仕事は物理的に難しいところもあるのかもしれない。

しかし、三谷幸喜の新作映画「THE有頂天ホテル」にて、いよいよ「映画俳優・生瀬勝久」が誕生する(はず)。三谷幸喜は役者へのダメ出しが厳しいことで知られているが、真田広之、唐沢寿明、生瀬勝久については、つねに手放しで、全幅の信頼を寄せているそうだ。そんな愛されぶりからして、今作ではきっと生瀬の熱演がたっぷり観られるに違いない。そろそろクランクアップらしいので、今から公開が楽しみ!

関連記事

「THE有頂天ホテル」公式サイト
http://www.uchoten.com/

参考文献

「三谷幸喜のありふれた生活」
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2005年08月12日

石井輝男を悼む

2005年8月12日、日本映画界の巨星が落ちた。石井輝男。享年81歳。奇しくも、亡くなる6時間前に「恐怖奇形人間」の記事を載せたところだった。まだまだ撮ってほしかった、ホントに。日本カルト界に与えた衝撃は大きい。

「網走番外地」をはじめとした黄金時代作品から、「ねじ式」など後期のカルト傑作まで、作品の多様ぶりにあらためて驚く。遺作は「盲獣vs一寸法師」になるのだろうか。スタッフがほぼ素人、かつデジタルビデオ作品ながら、秀逸なカット割りを駆使し、独特の世界観へぐいぐい引き込んできたのはさすがだった。


80歳を越えてもなお、貪欲に映画に取り組むさまは、彼を敬愛するサブカル少年少女のみならず、現代に生きる映画作家たちすべてにエネルギーを与えてくれたはず。
これをきっかけに、といったら失礼かもしれないが、石井輝男の全仕事を再評価していくために、傑作「恐怖奇形人間」がDVD化され、ひろく一般の人に観られるようになってほしいものだ。

石井監督からうけた刺激は計り知れません。ご冥福をお祈りいたします。

関連記事

「アサヒドットコム」
http://www.asahi.com/obituaries/update/0812/001.html?ref=rss

「東京シネマのぞき見隊」
http://www.walkerplus.com/tokyo/latestmovie/report/report1281.html
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石井輝男「恐怖奇形人間」

石井輝男「恐怖奇形人間」。内容の都合上、残念ながら現在までビデオ化されていないが、とんでもない映画である。なにがとんでもないかってとにかくエンディング。言葉では言い表せぬほどの衝撃。石井輝男はこのエンディングを撮るためだけにこの映画を作ったのは間違いない。もしどこかで観る機会があれば、ぜひ自分自身の目で体験していただきたい。20世紀映画史に燦然と輝く革命。今こんな映画を撮れたら確実に天下をとれるだろう。

この映画のベースは江戸川乱歩「パノラマ島奇譚」。前半はしっかりとしたドラマが描かれている。いくつものありえない偶然が積み重なって加速度的に物語が展開していくのが石井輝男脚本の特徴。今作も例外でなく、ものすごい偶然が主人公をピンポイントに襲うことで話が進む。

白眉は後半だ。江戸川乱歩シリーズに欠かせない名探偵が登場するあたりから、映画に不穏な空気が流れ始めていく。観る者がいままで感情移入してきた主人公の男がなりをひそめ、名探偵がどんどんでしゃばりだす。妄想としか思えない推理が100%の精度で的中。ひるむ悪役。突如あらわれた怪しい探偵の饒舌ぶりに苦笑いする観客をほったらかしたまま、なにかに追われているかのように話が急転。そして誰に感情移入することもできなくなり、気持ちが宙に浮いた刹那、突如襲いかかるエンディング。これまでに交錯した様々な思いが、打ちあがる花火とともに木っ端微塵に破壊され、究極レヴェルのカタルシスが我々を包み込むのだ。

こんな映画を産み落としてくれた石井輝男に心から感謝したい。「恐怖奇形人間」は間違いなく、20世紀が誇るべき遺産である。現在、脚本だけは売られているのだが、ぜひともDVD化してほしい。いろんな問題はあるのだろうが、なにしろ「面白い」のだから。輝男マニアはみんな「おかーさーん!」と叫びたいのだ!


関連記事

「たのみこむ」
http://www.tanomi.com/metoo/syusei.html?kid=2758
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向井秀徳と映画

ZAZEN BOYSの向井秀徳。ニューシングル「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」、五感にビリビリくるツェッペリンサウンドにやられてしまった。あらためてとんでもないバンドだと思う。全五曲、ぶっ通し、かつ爆音で聴くことをオススメします。


ゴキゲンなサウンドは言うに及ばず、彼の常軌を逸した妄想力は映画に昇華できそうな気がする。というのも、タワレコ「bounce.com」にて「妄想語り」を連載しているのだが、それがメチャクチャ面白いんである。第四回における「TOSATSUマン」など、三池崇史が監督したらとんでもないことになりそうだ。

向井は川島雄三を愛する無類の映画好きでもあり、塩田明彦や官藤官九郎監督作に楽曲も提供している。フジテレビやアップルとのコラボなどで、じわりじわり知名度が浸透してきているなか、満を持して監督っていう展開はなくはないだろう。個人的には、勢いのあるミュージシャンをごそっと集めて、石井聰亙「爆裂都市」のようなメチャクチャな作品にしてほしい。


関連記事

「bounce.com」
http://www.bounce.com/article/article.php/2022
「ナンバーガール大辞典(改訂版)」
http://www.toshiba-emi.co.jp/capitol/numbergirl/special/dic/sp.htm#KA
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2005年08月07日

山下敦弘「リンダリンダリンダ」

さっそく山下敦弘「リンダリンダリンダ」を観た。とある高校の文化祭、最終日の体育館ライブに向けて、4人の少女達がブルーハーツのコピーバンドを組む。ただそれだけの映画。しかし、なぜこれほどまでに心を打たれるのか。2005年夏、いまここに青春映画の金字塔が打ち立てられた。

文化祭、恋、そしてブルーハーツ。この3語だけで言い尽くせるような3日間のできごと。しかし少女らにとっては驚くほどに濃密だ。爆音のブルーハーツに涙したペ・ドゥナ。クラスメイトに恋する前田亜季。自分のプライドのため、がむしゃらにギターをかき鳴らす香椎由宇。寡黙ながら、仲間との絆を人一倍感じていた関根史織。4人がびしょ濡れのまま、裸足で演奏した「終わらない歌」は、熱狂する生徒たちやスクリーンを飛び越え、観ている我々の心の深層にまで易々と達してしまった。そこへ次々と挿入される、色あせた机や青いプールなどのなつかしい風景。頭の隅っこで埃をかぶっていた思い出が、グイっと引っ張りだされるような感覚。ただただ、涙した。


あと、個人的に気になったのは、湯川潮音と甲本雅裕。湯川潮音は、ブレイクが時間の問題のアーティスト。はっぴいえんどのカヴァー「風来坊」には震えた。私は去年、彼女の生歌を聴く機会があったのだが、あまりに美しい音色に時が止まる思いがしたほど。近い将来、日本中を席巻するだろう彼女の歌声、ぜひ一度お聴きください。ちなみに彼女、湯川トーベンの娘です。


甲本雅裕はご存知、甲本ヒロトの弟であり、三谷幸喜の劇団「東京サンシャインボーイズ」の一員である。粋なキャスティングに思わずニンマリ。

関連記事
CINEMA ENCOUNTER SPACE「山下敦弘インタビュー」
http://www.geocities.jp/positionwest3/04_jyouei/special/08_yamashita/index.htm
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2005年08月05日

大林宣彦「青春デンデケデケデケ」

一連の大阪芸大ムーブメントを支えたひとり、山下敦弘の新作「リンダ リンダ リンダ」がいよいよ公開だ。ペ・ドゥナのブルーハーツ、すごく期待している。

音楽、とくにバンドをテーマにした邦画でまず浮かぶ傑作は、やはり大林宣彦「青春デンデケデケデケ」だろう。ベンチャーズに憧れた少年が、クラスメイトを誘ってバンドを組む青春映画。

バンドのメンバー達がなんとも個性的だ。松坂大輔に似ている林泰文、当時からオーラ出まくりだった浅野忠信の二人がギター。ベースは、今やVシネ役者の大森嘉之。(今作における大森の演技はかなり完成されており、この年の映画賞を総なめにしている)ドラムスは、「踊る大走査線」にも出たらしいのだが、どこにでてたのかわからないような「存在感のなさ」がウリの永堀剛敏。4人の高校入学から卒業までの成長が描かれていく。

高校最後の文化祭で、彼らがベンチャーズをかき鳴らすシーンがあるのだが、音楽に少しでも関心のある方は気をつけた方が良いかもしれない。むしょうにバンドを組みたくなってしまうから。ほこりまみれのギターを再び手に取りたくなるのは必至である。岸辺一徳、佐野史郎、尾美としのりなど、脇を固める役者たちの存在も欠かせない。観音寺の美しい風景を背に、主人公達がチャリを走らせるところなど、ストライクに青春を感じる。

青春時代にバンドを組んでいた人も、組みたくても組めなかった人も、組もうともしなかった人も、あの文化祭での4人の輝きを目にすれば、それぞれになにかしら、戦慄に近いグルーヴを感じられるのではないだろうか。必見!


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2005年08月04日

竹中直人「無能の人」

俳優が映画監督としてデビューする、よくみられることだが、傑作は少ないように思う。
そんな中で、コンスタントに佳作を産み出している監督がいる。竹中直人である。

つげ義春原作「無能の人」が処女作。個人的には竹中作品の中でいちばん好き。
かつて漫画家として名を売った男、助川助三(竹中直人)は、妻と子を持ちながら、定職に就こうとせず、楽をして金儲けができないかを常に考えるような「無能の人」。多摩川の河原で拾った石を多摩川の河原で売る生活を送っている。無能な夫にあきれながらも、小さい子供を育てるためにスーパーのビラ配りをしている妻(風吹ジュン)。そんな家族の貧しい生活を、ユーモアを交えあたたかく描いた作品だ。

竹中映画で特筆すべきは、秀逸なキャスティング。「無能の人」では、ヒロインの風吹ジュンをはじめ、脇役のマルセ太郎、神戸浩、子役の少年が素晴らしく、つげワールドを忠実に表現している。

竹中が、監督として自由にのびのびやっているのが伝わってくる。それまでの役者としてのキャリアが、スタッフとのコミュニケーションを円滑にさせたのだろうか。しきりに役者の後姿をとらえるところなどは、「映画小僧・竹中直人」の好みが如実にでていて素敵だ。さらにゴンチチの癒しの音楽も「切なあたたかさ」を添えてくれる。家族三人が手をつないで河原を歩くラストシーンでは、誰もがほっこりとなるはず。

私にとってこの映画は、常に手元においておきたくなるような、そしてこころにゆとりがあるときにゆっくり見たいような愛すべき作品である。




近く、新作「さよならCOLOR」が公開される。ヒロインは原田知世。観たい。

参考文献

「フィルムメーカーズ 竹中直人」キネマ旬報社
posted by ワイ氏 at 01:41| Comment(0) | TrackBack(1) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月02日

映画監督「三池崇史」

映画業界が空前の活況なのだそうだ。数多くの邦画が間断なく製作されている今の状況を見れば、それも納得できる。なんとも幸せな時代の到来です。

こうした状況をつくりだした要因のひとつに、すぐれた監督が続々と現れている点が挙げられる。デジタルビデオとファイナルカットがあれば、誰しもが映画監督になれる現在、プロにはさらなるクオリティー向上が叫ばれてるわけで、そんな中を生き抜いている今の監督達はやはり強い、と思う。

三池崇史という映画監督がいる。彼はかつての邦画暗黒時代を抗い続け、今なお第一線で活躍する存在。彼のスゴいところは、いい意味での「こだわりのなさ」にあると思う。彼が今まで取り組んできた映画をみても、とにかくさまざまなジャンルがあることに驚く。アイドルプロモ映画「アンドロメディア」から、アングラ極道映画「牛頭」まで、とにかく目の前のものをがむしゃらに撮りまくってるような印象をうける。(事実、撮りまくっている。)自主制作というポジションを維持しつつ、自分の世界に徹底的にこだわる塚本晋也とは真逆な位置にいると言っていい。

「おんなじジャンルの映画ばっかり撮ってたらダメ。そのジャンルの仕事しかこなくなるから」っていうのが彼のポリシーであり、そんな中あの「DEAD OR ALIVE 犯罪者」が誕生した。誰もがずっこけたあのラストシーンを観れば、彼の「一介のVシネ監督で終わりたくない」という思いがひしひしと伝わる。三池の世界を手軽に感じることのできる映画だ。


欧米では早くから三池研究が盛んだったが(TIME誌にも載ったことがある!)日本でもようやく評価されるようになってきた。そんな中いよいよ、彼の新作「妖怪大戦争」が、満を持して公開される。試写会のレポートによれば、かなりマニアックな内容になっているらしく、非常に楽しみ!

引用文献

「アサヒドットコム」
http://www.asahi.com/culture/update/0801/017.html?ref=rss

「シネマ de スイート(ブログ版)」
http://blog.goo.ne.jp/nx2_alice/e/727aa8281bf1aeafab64978c1a1b2d37

三池崇史著「監督中毒」

posted by ワイ氏 at 07:35| Comment(2) | TrackBack(2) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

塚本晋也「鉄男」

監督「塚本晋也」について。塚本晋也の日本における知名度はまだまだ低いように思う。しかしながら、海外、とくにヴェネチアにおける彼の評価は絶大である。北野武が「HANABI」で金獅子賞を獲った「ヴェネチア映画祭」で、塚本が審査員を務めていたという事実は意外に知られていない。最新作「ヴィタール」も、あまり話題にならなかったような印象を受けた。自主制作の35ミリ作品というのは驚くべきことなのだが‥.

塚本晋也のなにがすごいかって、自分のイメージを100パーセント具現化するために、製作資金を自分自身でかき集める、自主制作映画監督であるにもかかわらず、それが商業的にも成功し、かつ世界で高い評価を受けているところにほかならない。

塚本と言えば、世界中を震撼させた劇場デビュー作「鉄男」を誰しもが思い浮かべるだろう。男(田口トモロヲ)が朝、鏡に向かってヒゲを剃っていると、右頬に小さな鉄くぎのようなものがささっているのに気づく。そこから加速度的に鉄に浸食されていき、ついには鉄のかたまりとなって、やつ(塚本晋也)とのグロテスクかつパワフル、それでいてエロい肉弾プロレスを展開させる、エロギャグホラー映画。

随所にちりばめられたコマ撮りは、PFFでグランプリを獲った8ミリ時代の傑作「電柱小僧の冒険」からすでに取り入れていた方法で、「鉄男」ではそれがさらに洗練され、作品のスピード感を増幅させるのに充分機能している。田口トモロヲ、藤原京、六平直政、石橋蓮司など、当時のアングラシーンを支えた役者達の怪演も見逃せないところだ。

「鉄男」の放つあまりのエネルギーは、観るものを選んでしまうかもしれない。ただ、ひとたびハマってしまうと、何度も観ずにはおれなくなる中毒性を秘めている点は強調したい。
とにもかくにも圧倒されるのひとこと。めいっぱいテレビに近づいて、爆音でご鑑賞いただきたい、とは塚本の弁。どうかこころしてご覧ください。


追記。塚本晋也は役者としても素晴らしい。「演技が上手い」という表現は、この人のためにあると言っていいほど、静かな役からヤバい役まで、飄々と演じ切ってしまうのはお見事。自身の監督作にもほとんど出演し、圧倒的な存在感を見せる。他の監督の作品にも多数出演。三池崇史「DOA2」、「殺し屋1」、竹中直人「119」、利重剛「クロエ」がとくにオススメ。作品の空気が読めているというか、溶け込みっぷりはもちろん、個人的には声がよいと思う。


さらに追記。今年の仙台短編映画祭2005に、ゲストとして来場するらしい。

引用文献

「Shortpiece!blog」
http://shortpiece.blog9.fc2.com/blog-entry-27.html

「塚本読本 普通サイズの巨人」キネマ旬報社


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2005年07月28日

犬神家の一族

第一回は市川崑「犬神家の一族」。とてつもない完成度、一部のすきも無い傑作ぶりに思わず唸った。

オープニングクレジットからアバンギャルド。キャスト、監督の名がスクリーンいっぱいの明朝体サイズで次々出てきたのち(庵野秀明に影響を与えたのはあきらかだ)、犬神家の歴史、犬神家の当主「佐兵衛」の死が唐突に語られてゆく。そこに重厚な音楽、綿密なショットが加わって、ミステリー映画としてこれ以上ないほどの完璧なスタートをきっている。そこからはもう虜である。

遺産相続をめぐる血みどろの「見立て」殺人劇。それを彩る怪しさ満点の濃ゆすぎる登場人物たち。絶妙に飛び出す金田一耕助の名推理。ハッと息をのむ死体のショット。それらが独特の「リズム」を刻んだ編集によって丹念に描かれている。大滝秀治、加藤武など、脇を固めるバイプレイヤーたちの怪演技も最高だ。

現代日本映画の中心付近に存在している岩井俊二は、この映画を「教科書」としてとらえている。なるほど、たしかに素晴らしい「バランス」感覚をもった映画。二時間半というボリュームゆえ、ゆとりのある時間にじっくり鑑賞したい作品。犯人探しのミステリー映画としても純粋に楽しめるので、未見の方は是非ご覧あれ。

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