2005年08月12日

石井輝男を悼む

2005年8月12日、日本映画界の巨星が落ちた。石井輝男。享年81歳。奇しくも、亡くなる6時間前に「恐怖奇形人間」の記事を載せたところだった。まだまだ撮ってほしかった、ホントに。日本カルト界に与えた衝撃は大きい。

「網走番外地」をはじめとした黄金時代作品から、「ねじ式」など後期のカルト傑作まで、作品の多様ぶりにあらためて驚く。遺作は「盲獣vs一寸法師」になるのだろうか。スタッフがほぼ素人、かつデジタルビデオ作品ながら、秀逸なカット割りを駆使し、独特の世界観へぐいぐい引き込んできたのはさすがだった。


80歳を越えてもなお、貪欲に映画に取り組むさまは、彼を敬愛するサブカル少年少女のみならず、現代に生きる映画作家たちすべてにエネルギーを与えてくれたはず。
これをきっかけに、といったら失礼かもしれないが、石井輝男の全仕事を再評価していくために、傑作「恐怖奇形人間」がDVD化され、ひろく一般の人に観られるようになってほしいものだ。

石井監督からうけた刺激は計り知れません。ご冥福をお祈りいたします。

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「アサヒドットコム」
http://www.asahi.com/obituaries/update/0812/001.html?ref=rss

「東京シネマのぞき見隊」
http://www.walkerplus.com/tokyo/latestmovie/report/report1281.html
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石井輝男「恐怖奇形人間」

石井輝男「恐怖奇形人間」。内容の都合上、残念ながら現在までビデオ化されていないが、とんでもない映画である。なにがとんでもないかってとにかくエンディング。言葉では言い表せぬほどの衝撃。石井輝男はこのエンディングを撮るためだけにこの映画を作ったのは間違いない。もしどこかで観る機会があれば、ぜひ自分自身の目で体験していただきたい。20世紀映画史に燦然と輝く革命。今こんな映画を撮れたら確実に天下をとれるだろう。

この映画のベースは江戸川乱歩「パノラマ島奇譚」。前半はしっかりとしたドラマが描かれている。いくつものありえない偶然が積み重なって加速度的に物語が展開していくのが石井輝男脚本の特徴。今作も例外でなく、ものすごい偶然が主人公をピンポイントに襲うことで話が進む。

白眉は後半だ。江戸川乱歩シリーズに欠かせない名探偵が登場するあたりから、映画に不穏な空気が流れ始めていく。観る者がいままで感情移入してきた主人公の男がなりをひそめ、名探偵がどんどんでしゃばりだす。妄想としか思えない推理が100%の精度で的中。ひるむ悪役。突如あらわれた怪しい探偵の饒舌ぶりに苦笑いする観客をほったらかしたまま、なにかに追われているかのように話が急転。そして誰に感情移入することもできなくなり、気持ちが宙に浮いた刹那、突如襲いかかるエンディング。これまでに交錯した様々な思いが、打ちあがる花火とともに木っ端微塵に破壊され、究極レヴェルのカタルシスが我々を包み込むのだ。

こんな映画を産み落としてくれた石井輝男に心から感謝したい。「恐怖奇形人間」は間違いなく、20世紀が誇るべき遺産である。現在、脚本だけは売られているのだが、ぜひともDVD化してほしい。いろんな問題はあるのだろうが、なにしろ「面白い」のだから。輝男マニアはみんな「おかーさーん!」と叫びたいのだ!


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「たのみこむ」
http://www.tanomi.com/metoo/syusei.html?kid=2758
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向井秀徳と映画

ZAZEN BOYSの向井秀徳。ニューシングル「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」、五感にビリビリくるツェッペリンサウンドにやられてしまった。あらためてとんでもないバンドだと思う。全五曲、ぶっ通し、かつ爆音で聴くことをオススメします。


ゴキゲンなサウンドは言うに及ばず、彼の常軌を逸した妄想力は映画に昇華できそうな気がする。というのも、タワレコ「bounce.com」にて「妄想語り」を連載しているのだが、それがメチャクチャ面白いんである。第四回における「TOSATSUマン」など、三池崇史が監督したらとんでもないことになりそうだ。

向井は川島雄三を愛する無類の映画好きでもあり、塩田明彦や官藤官九郎監督作に楽曲も提供している。フジテレビやアップルとのコラボなどで、じわりじわり知名度が浸透してきているなか、満を持して監督っていう展開はなくはないだろう。個人的には、勢いのあるミュージシャンをごそっと集めて、石井聰亙「爆裂都市」のようなメチャクチャな作品にしてほしい。


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「bounce.com」
http://www.bounce.com/article/article.php/2022
「ナンバーガール大辞典(改訂版)」
http://www.toshiba-emi.co.jp/capitol/numbergirl/special/dic/sp.htm#KA
posted by ワイ氏 at 02:19| Comment(22) | TrackBack(4) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月07日

山下敦弘「リンダリンダリンダ」

さっそく山下敦弘「リンダリンダリンダ」を観た。とある高校の文化祭、最終日の体育館ライブに向けて、4人の少女達がブルーハーツのコピーバンドを組む。ただそれだけの映画。しかし、なぜこれほどまでに心を打たれるのか。2005年夏、いまここに青春映画の金字塔が打ち立てられた。

文化祭、恋、そしてブルーハーツ。この3語だけで言い尽くせるような3日間のできごと。しかし少女らにとっては驚くほどに濃密だ。爆音のブルーハーツに涙したペ・ドゥナ。クラスメイトに恋する前田亜季。自分のプライドのため、がむしゃらにギターをかき鳴らす香椎由宇。寡黙ながら、仲間との絆を人一倍感じていた関根史織。4人がびしょ濡れのまま、裸足で演奏した「終わらない歌」は、熱狂する生徒たちやスクリーンを飛び越え、観ている我々の心の深層にまで易々と達してしまった。そこへ次々と挿入される、色あせた机や青いプールなどのなつかしい風景。頭の隅っこで埃をかぶっていた思い出が、グイっと引っ張りだされるような感覚。ただただ、涙した。


あと、個人的に気になったのは、湯川潮音と甲本雅裕。湯川潮音は、ブレイクが時間の問題のアーティスト。はっぴいえんどのカヴァー「風来坊」には震えた。私は去年、彼女の生歌を聴く機会があったのだが、あまりに美しい音色に時が止まる思いがしたほど。近い将来、日本中を席巻するだろう彼女の歌声、ぜひ一度お聴きください。ちなみに彼女、湯川トーベンの娘です。


甲本雅裕はご存知、甲本ヒロトの弟であり、三谷幸喜の劇団「東京サンシャインボーイズ」の一員である。粋なキャスティングに思わずニンマリ。

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CINEMA ENCOUNTER SPACE「山下敦弘インタビュー」
http://www.geocities.jp/positionwest3/04_jyouei/special/08_yamashita/index.htm
posted by ワイ氏 at 02:06| Comment(1) | TrackBack(8) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月05日

大林宣彦「青春デンデケデケデケ」

一連の大阪芸大ムーブメントを支えたひとり、山下敦弘の新作「リンダ リンダ リンダ」がいよいよ公開だ。ペ・ドゥナのブルーハーツ、すごく期待している。

音楽、とくにバンドをテーマにした邦画でまず浮かぶ傑作は、やはり大林宣彦「青春デンデケデケデケ」だろう。ベンチャーズに憧れた少年が、クラスメイトを誘ってバンドを組む青春映画。

バンドのメンバー達がなんとも個性的だ。松坂大輔に似ている林泰文、当時からオーラ出まくりだった浅野忠信の二人がギター。ベースは、今やVシネ役者の大森嘉之。(今作における大森の演技はかなり完成されており、この年の映画賞を総なめにしている)ドラムスは、「踊る大走査線」にも出たらしいのだが、どこにでてたのかわからないような「存在感のなさ」がウリの永堀剛敏。4人の高校入学から卒業までの成長が描かれていく。

高校最後の文化祭で、彼らがベンチャーズをかき鳴らすシーンがあるのだが、音楽に少しでも関心のある方は気をつけた方が良いかもしれない。むしょうにバンドを組みたくなってしまうから。ほこりまみれのギターを再び手に取りたくなるのは必至である。岸辺一徳、佐野史郎、尾美としのりなど、脇を固める役者たちの存在も欠かせない。観音寺の美しい風景を背に、主人公達がチャリを走らせるところなど、ストライクに青春を感じる。

青春時代にバンドを組んでいた人も、組みたくても組めなかった人も、組もうともしなかった人も、あの文化祭での4人の輝きを目にすれば、それぞれになにかしら、戦慄に近いグルーヴを感じられるのではないだろうか。必見!


posted by ワイ氏 at 13:10| Comment(0) | TrackBack(1) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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