2005年08月04日

竹中直人「無能の人」

俳優が映画監督としてデビューする、よくみられることだが、傑作は少ないように思う。
そんな中で、コンスタントに佳作を産み出している監督がいる。竹中直人である。

つげ義春原作「無能の人」が処女作。個人的には竹中作品の中でいちばん好き。
かつて漫画家として名を売った男、助川助三(竹中直人)は、妻と子を持ちながら、定職に就こうとせず、楽をして金儲けができないかを常に考えるような「無能の人」。多摩川の河原で拾った石を多摩川の河原で売る生活を送っている。無能な夫にあきれながらも、小さい子供を育てるためにスーパーのビラ配りをしている妻(風吹ジュン)。そんな家族の貧しい生活を、ユーモアを交えあたたかく描いた作品だ。

竹中映画で特筆すべきは、秀逸なキャスティング。「無能の人」では、ヒロインの風吹ジュンをはじめ、脇役のマルセ太郎、神戸浩、子役の少年が素晴らしく、つげワールドを忠実に表現している。

竹中が、監督として自由にのびのびやっているのが伝わってくる。それまでの役者としてのキャリアが、スタッフとのコミュニケーションを円滑にさせたのだろうか。しきりに役者の後姿をとらえるところなどは、「映画小僧・竹中直人」の好みが如実にでていて素敵だ。さらにゴンチチの癒しの音楽も「切なあたたかさ」を添えてくれる。家族三人が手をつないで河原を歩くラストシーンでは、誰もがほっこりとなるはず。

私にとってこの映画は、常に手元においておきたくなるような、そしてこころにゆとりがあるときにゆっくり見たいような愛すべき作品である。




近く、新作「さよならCOLOR」が公開される。ヒロインは原田知世。観たい。

参考文献

「フィルムメーカーズ 竹中直人」キネマ旬報社
posted by ワイ氏 at 01:41| Comment(0) | TrackBack(1) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年08月02日

映画監督「三池崇史」

映画業界が空前の活況なのだそうだ。数多くの邦画が間断なく製作されている今の状況を見れば、それも納得できる。なんとも幸せな時代の到来です。

こうした状況をつくりだした要因のひとつに、すぐれた監督が続々と現れている点が挙げられる。デジタルビデオとファイナルカットがあれば、誰しもが映画監督になれる現在、プロにはさらなるクオリティー向上が叫ばれてるわけで、そんな中を生き抜いている今の監督達はやはり強い、と思う。

三池崇史という映画監督がいる。彼はかつての邦画暗黒時代を抗い続け、今なお第一線で活躍する存在。彼のスゴいところは、いい意味での「こだわりのなさ」にあると思う。彼が今まで取り組んできた映画をみても、とにかくさまざまなジャンルがあることに驚く。アイドルプロモ映画「アンドロメディア」から、アングラ極道映画「牛頭」まで、とにかく目の前のものをがむしゃらに撮りまくってるような印象をうける。(事実、撮りまくっている。)自主制作というポジションを維持しつつ、自分の世界に徹底的にこだわる塚本晋也とは真逆な位置にいると言っていい。

「おんなじジャンルの映画ばっかり撮ってたらダメ。そのジャンルの仕事しかこなくなるから」っていうのが彼のポリシーであり、そんな中あの「DEAD OR ALIVE 犯罪者」が誕生した。誰もがずっこけたあのラストシーンを観れば、彼の「一介のVシネ監督で終わりたくない」という思いがひしひしと伝わる。三池の世界を手軽に感じることのできる映画だ。


欧米では早くから三池研究が盛んだったが(TIME誌にも載ったことがある!)日本でもようやく評価されるようになってきた。そんな中いよいよ、彼の新作「妖怪大戦争」が、満を持して公開される。試写会のレポートによれば、かなりマニアックな内容になっているらしく、非常に楽しみ!

引用文献

「アサヒドットコム」
http://www.asahi.com/culture/update/0801/017.html?ref=rss

「シネマ de スイート(ブログ版)」
http://blog.goo.ne.jp/nx2_alice/e/727aa8281bf1aeafab64978c1a1b2d37

三池崇史著「監督中毒」

posted by ワイ氏 at 07:35| Comment(2) | TrackBack(2) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

塚本晋也「鉄男」

監督「塚本晋也」について。塚本晋也の日本における知名度はまだまだ低いように思う。しかしながら、海外、とくにヴェネチアにおける彼の評価は絶大である。北野武が「HANABI」で金獅子賞を獲った「ヴェネチア映画祭」で、塚本が審査員を務めていたという事実は意外に知られていない。最新作「ヴィタール」も、あまり話題にならなかったような印象を受けた。自主制作の35ミリ作品というのは驚くべきことなのだが‥.

塚本晋也のなにがすごいかって、自分のイメージを100パーセント具現化するために、製作資金を自分自身でかき集める、自主制作映画監督であるにもかかわらず、それが商業的にも成功し、かつ世界で高い評価を受けているところにほかならない。

塚本と言えば、世界中を震撼させた劇場デビュー作「鉄男」を誰しもが思い浮かべるだろう。男(田口トモロヲ)が朝、鏡に向かってヒゲを剃っていると、右頬に小さな鉄くぎのようなものがささっているのに気づく。そこから加速度的に鉄に浸食されていき、ついには鉄のかたまりとなって、やつ(塚本晋也)とのグロテスクかつパワフル、それでいてエロい肉弾プロレスを展開させる、エロギャグホラー映画。

随所にちりばめられたコマ撮りは、PFFでグランプリを獲った8ミリ時代の傑作「電柱小僧の冒険」からすでに取り入れていた方法で、「鉄男」ではそれがさらに洗練され、作品のスピード感を増幅させるのに充分機能している。田口トモロヲ、藤原京、六平直政、石橋蓮司など、当時のアングラシーンを支えた役者達の怪演も見逃せないところだ。

「鉄男」の放つあまりのエネルギーは、観るものを選んでしまうかもしれない。ただ、ひとたびハマってしまうと、何度も観ずにはおれなくなる中毒性を秘めている点は強調したい。
とにもかくにも圧倒されるのひとこと。めいっぱいテレビに近づいて、爆音でご鑑賞いただきたい、とは塚本の弁。どうかこころしてご覧ください。


追記。塚本晋也は役者としても素晴らしい。「演技が上手い」という表現は、この人のためにあると言っていいほど、静かな役からヤバい役まで、飄々と演じ切ってしまうのはお見事。自身の監督作にもほとんど出演し、圧倒的な存在感を見せる。他の監督の作品にも多数出演。三池崇史「DOA2」、「殺し屋1」、竹中直人「119」、利重剛「クロエ」がとくにオススメ。作品の空気が読めているというか、溶け込みっぷりはもちろん、個人的には声がよいと思う。


さらに追記。今年の仙台短編映画祭2005に、ゲストとして来場するらしい。

引用文献

「Shortpiece!blog」
http://shortpiece.blog9.fc2.com/blog-entry-27.html

「塚本読本 普通サイズの巨人」キネマ旬報社


posted by ワイ氏 at 03:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月28日

犬神家の一族

第一回は市川崑「犬神家の一族」。とてつもない完成度、一部のすきも無い傑作ぶりに思わず唸った。

オープニングクレジットからアバンギャルド。キャスト、監督の名がスクリーンいっぱいの明朝体サイズで次々出てきたのち(庵野秀明に影響を与えたのはあきらかだ)、犬神家の歴史、犬神家の当主「佐兵衛」の死が唐突に語られてゆく。そこに重厚な音楽、綿密なショットが加わって、ミステリー映画としてこれ以上ないほどの完璧なスタートをきっている。そこからはもう虜である。

遺産相続をめぐる血みどろの「見立て」殺人劇。それを彩る怪しさ満点の濃ゆすぎる登場人物たち。絶妙に飛び出す金田一耕助の名推理。ハッと息をのむ死体のショット。それらが独特の「リズム」を刻んだ編集によって丹念に描かれている。大滝秀治、加藤武など、脇を固めるバイプレイヤーたちの怪演技も最高だ。

現代日本映画の中心付近に存在している岩井俊二は、この映画を「教科書」としてとらえている。なるほど、たしかに素晴らしい「バランス」感覚をもった映画。二時間半というボリュームゆえ、ゆとりのある時間にじっくり鑑賞したい作品。犯人探しのミステリー映画としても純粋に楽しめるので、未見の方は是非ご覧あれ。

posted by ワイ氏 at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ワイ氏のレビュー、はじめました。

ワイ氏のレビュー、はじめました。映画、とくに日本映画を中心に、新旧問わずレビューしていきますので、よろしくお願いします。
posted by ワイ氏 at 03:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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